1999年、2005年、2019年−−。
3つの時代で見つめる、一人の男と
その【家族・ファミリー】の壮大な物語。
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第一章:1999年 出会い
派手な金髪に真っ白な上下で全身を包んだ19歳の山本賢治(綾野剛)。証券マンだった父はバブル崩壊後に手を出した覚せい剤で命を落とし、母親もすでに世を去っている。身寄りのない山本は、悪友の細野(市原隼人)・大原(二ノ宮隆太郎)と連れ立っては、その日暮らしの生活を送っていた。
そんなある日、行きつけの食堂で飲んでいた山本は、そこに居合わせた柴咲組組長・柴咲博(舘ひろし)をチンピラの襲撃から救う。これが二人の出会いだった。食堂を営む愛子(寺島しのぶ)の亡き夫は柴咲の弟分でもあった。
後日、柴咲組と敵対する侠葉会の若頭・加藤(豊原功補)と若頭補佐の川山(駿河太郎)によって、港に拉致された山本たち。それは父の死に遺恨を抱く山本が、侠葉会の息のかかった売人から覚せい剤を横取りしたことに対する報復だったが、たまたま持っていた柴咲の名刺がこの危機を救う。
一命を取り留めた山本は柴咲と再会を果たす。父に覚せい剤を売りつけたヤクザを山本は憎んでいた。そんな山本を“ケン坊”と呼んで迎え入れる柴咲。自暴自棄になっていた自分に手を差し伸べてくれた柴咲に山本は心の救いを得て、二人は父子の契りを結ぶ。こうして山本はヤクザの世界へ足を踏み入れた。 -
第二章:2005年 誇りを賭けた闘い
柴咲組の一員となった山本は、持ち前の一本気を武器に、細野や大原とヤクザの世界で男をあげつつあった。背中に彫り込んだ修羅像も板についている。世間では日本経済の回復が続いており、その景気拡大は戦後最長記録を更新していた。
そんな中、因縁の相手・侠葉会との争いは激化する一方だった。その日もキャバクラの店内で鉢合わせた川山とやり合いになるが、傷の手当てをしてくれたホステスの由香(尾野真千子)に、山本は好意を持つ。自分と同じように家族のいない由香の前でだけ、山本は鎧を脱いで心の安らぎを手に入れることができた。
しかし運命は非情だった。腹の虫がおさまらない加藤の差し金で柴咲が襲われ、代わりに仲間の大原が犠牲となるが、静岡県警の刑事・大迫(岩松了)はこの件に手を出さないよう柴咲組に釘を刺す。「これからは社会でヤクザを裁くのは法や警察だけじゃない。世の中全体に排除されるようになります。時代は変わっていくんですよ」。
それでも引き下がれない山本は、自分の大切な居場所であるファミリー=柴咲組を守るために、加藤たちの元へ単身乗り込む。川山の背後から拳銃を構え、引き金を引こうとしたとき、包丁を握った柴咲組若頭の中村(北村有起哉)がその横を追い抜いた。「ケン坊、親父のこと頼んだぞ」。
そんな中村の姿を目の当たりにした山本は、血に染まった川山を前に、ある決断をするのだった。 -
第三章:2019年 激変した世界
中村の罪をかぶった山本が獄中から出てきたのは14年後。その髪には白いものが混じっている。そこで山本を待ち受けていたのは、暴対法の影響で存続も危うい状態に一変した柴咲組の姿だった
かつての盟友・細野は組を抜け、結婚して子供をもうけていた。「ヤクザ辞めても、人間として扱ってもらうには5年かかるんです。口座も、保険も、家も」。“5年ルール”の厳しさを口にした細野は、食事代をもとうとする山本を頑なに固辞した。いまだ柴咲組に籍を置く山本にご馳走してもらえば、反社会からの金を受け取ることになる。ヤクザは仲間に奢ることさえ許されない時代になっていた。
一方で、愛子の息子・翼(磯村勇斗)は22歳になり、柴咲組のシノギを手伝いながら夜の町を仕切っていた。柴咲組の組員だった父親を抗争で亡くし、山本を慕う翼は、新世代の青年らしいクールな感性に見え隠れする危うさを秘めていた。
ヤクザを取り巻く状況の変化に戸惑いながらも、由香と再会した山本は、14歳になる彩が自分の娘であることを知る。あれほど焦がれた自らの家庭を築くため、組を抜けて新たな人生を歩もうとする山本だったが、元ヤクザという経歴は恩人の細野や由香を巻き込み、思わぬ形で愛する者たちの運命を狂わせていく。それはほかでもない自分のせいで、ようやく掴みかけたかけがえのない家族を失うという、この上なく残酷な現実だった。
そんな山本を気遣う翼が打ち明ける。「親父殺したやつ見つけたんすよ」。
翼の瞳の奥に危険な光を見た山本は、自分の過去のすべてを背負って未来へとつなげるために、ヤクザとしての人生に決着をつけようとする-。
シム・ウンギョン女優
【一期一会】
私たちはみんな、絆を求めて居場所を探し続けながら、心の戦いを繰り返しながら生きているのかもしれない。
横浜流星俳優
魂がえぐられました。
人間臭く、とてもエモーショナルで感情がわけわからなくなりました。
皆さんの作品への熱量を感じ、自分もあの世界に入って皆さんと共に生きたいと思いましたし、これから先も心に残る大好きな作品です。
笠井信輔フリーアナウンサー
反社会勢力時代のヤクザをこんなに切なく描くとは!
家族との葛藤を綾野剛が歳を重ねながら熱演し、組長・舘ひろしのなんたる存在感、哀愁。
北村有起哉、市原隼人、役者が皆光る令和版ゴッドファーザー。
小林勇貴映画監督
「作品に罪はない」ある時からよく聞くようになった言葉。完全な違和感。
罪のないものを世に出回す、そうして一体どうなるか?
「罪のないものだけが世にいていい」ノーミス強要社会の拡張。もううんざりだ! 加担はしない。俺は罪をみたい!!!
藤井道人監督の傑作「ヤクザと家族」は物語開始から美しき過ちを延々とみせつける! 徹底されたリアリティ! 章ごとに変化する撮影技法! 悲哀のエンターテイメント!
横山由依アイドル
今この時代に出会えてよかったです。
幼い頃はいつも一緒にいるのが家族だと思っていましたが、最近は離れていても家族だし、人の数だけ考えがあり家族のかたちもそれぞれなのではないかとぼんやりと思っていました。
その中でこの映画を観ていると、古いもの、新しいもの、様々な考え方が提示されていてまた考えるきっかけをもらいました。
どんな時代でも変わらないのは家族、家族のような大切な人たちと過ごせる時間は永遠ではないということ。
今を大切に生きていきたいと思います。
2021年、初泣きしました。
おおのこうすけマンガ家
こんなに現代的で、リアルなヤクザ像を描いた作品は初めて観ました。
ヤクザ映画というのは、暴力・金・義理人情の世界で、自分たちとは遠い世界だからこそスリリングで魅力的。
冒頭はそんなハードボイルドな映画として観てました。
中盤以降は、ここまで厳しく描くのかというくらい義理人情や綺麗事じゃ飯は食えない、現代的なヤクザのストーリーに引き込まれてしまいました。
変わっていく時代とヤクザ、それに関わる家族の在り方を考えさせられました。
この映画を通じて、山本賢治というひとりの不器用な男が、確かに存在していたように感じます。
赤ペン瀧川映画プレゼンター
「めっちゃ凄い映画を観てしまったよ…暴対法改正案が施行された事によるヤクザの光と影。その荒波の中、もがき苦しむ男の20年間。これぞ、ヤクザ近代史!ヤクザの大河ドラマがここに完成!最高でした!!」
SYO映画ライター
肌を刺す衝撃に、叫びだしそうになった。
日本人のDNAに刻まれた無法者への憧憬を粉砕する、革命的傑作。
本作を境に、やくざ映画は一変するだろう。
時代が、終わる。
松崎健夫映画評論家
異端者たちの疑似家族的な強い絆を観ていたはず観客は、いつの間にか時代を振り返り「なぜ、こんな社会になってしまったのか?」という疑念を抱くようになる。
これは平成から令和への遷移を漂流する“私たち”の物語なのだ。
川村夕祈子キネマ旬報編集部
日本映画は確実に進化していると思える一作。
「ヤクザ」という存在は他人事ではない。その言葉を何かに置き換えてみると、
いま、この映画がいかに重要かがさらにわかると思う。
映画.com
この作品は“全て”を超えてくるー。
綾野剛は今作で並み居る役者はおろか、
過去の自分自身も置き去りにしたと言わざるを得ない。
廣末 登ノンフィクション作家 / 社会学者
この作品は、現代社会の歪さが生み出した愛別離苦の悲哀を描く。
家族を全身全霊で愛し、生きる権利を諦めない人間の生きざまは、誇り高く美しい。
家族を愛する全ての人に観て欲しい、極めて上質なヒューマン・ドラマである。
柚月裕子作家
――真の敵はなんだろう。
本作を観ながらそう思いました。この作品はひどく悲しいです。登場する人物が愛しく思えるからこそ、切なさが残ります。人との繋がり、組織、社会は、時代とともに変化していきます。その関係性を鋭くとらえた脚本に唸り、役者のみなさまの迫真の演技に圧倒されました。絆の大切さが問われるいま、観るべき映画だと思います。
岡 大映画ナタリー編集長
綾野剛、舘ひろし、市原隼人、磯村勇斗……俳優陣がそれぞれキャリアベストと言っても過言ではない凄みのある演技を見せる。ヤクザの世界を描いた物語にこれほど身につまされるのは、彼らの熱演なくしてありえない。
遠藤千里FILMAGA編集長
無常を痛いほど感じるのは“ヤクザ”のフィルターを通すからだろう。
相反する深く永遠に続くような家族愛が際立ち、圧倒される。
主題歌「FAMILIA」に包み込まれるエンドロールまで、余すところ無く超一級。
順不同